子供たちが小さいころ釣り堀に行ってみたことがある。
受付で釣りざおと練ったエサを受け取って、魚たちがいる池へ。
池の中のすぐ目の前に魚たちがゆっくり泳いでいるのが見えるので、
エサをつけた釣り糸を魚たちのすぐ目の前に落としてみる。
魚たち、反応なし。
ほかのお客さんも釣れてる感じはない。
「きっとみんなお腹すいてないんだヨ。」とか
子供たちと言いながらのんびり待つ。
途中でエサを取り替えたり、
別な魚のグループのところへ狙いを変えてみても、
やっぱり魚たち、反応なし。
ヒマ…。
たまたま、残っていたエサをちぎって
小さく丸めて池に投げ入れたら、
近くの魚がバシャっとすぐ反応して
エサはあっという間になくなった。
ん!?
同じグループのところにエサ付きの釣り糸を入れてみるが、
それには反応なし。
すぐ近くをゆっくり通り過ぎていく。
!??
もう一度、エサだけを小さく丸めて投げ入れてみると、
それにはすぐ食いつく。
釣り糸に付いたエサには反応なし。
繰り返してみたが同じだ。
そこで、エサを小さく丸めたものを5~6個つくり、
それとエサ付きの釣り糸もいっしょに同じところに一度に投げてみた。
そしたらバシャバシャっと魚たちが集まって取り合いになって、
そのドサクサで1匹釣れた!おおお!
もう1回やったら同じくうまくいってまた釣れた。
子供たちも喜んでくれて親としてとても嬉しかった。
でも、なんでだ…??
たぶん魚たちは、エサそのものは食べたい。
でも釣り糸付きのエサは危ないものだとわかってて食べにこない。
そこを見分けて判断している。
食欲に勝る「理性」を持っているかのようだ。
で、たくさん混ぜて投げたときに、
慌て者の1匹が間違ってか、それとも釣り糸が見えなかったかで、
釣り糸付きのエサを食ってしまった、のだろう。
なんで魚たちは釣り糸付きのエサが危ないってわかるんだろう?
釣り堀で暮らすうちに釣りあげられていく仲間を見て学習したのかな?
それとも本能というか、自分はそういうのを見てないんだけど、
釣り糸付きのエサを食って釣りあげられた仲間を見て釣り糸付きは
危ないんだな、って覚えた魚の先祖の記憶が遺伝してるのかな?
確かに人間でも、自分で経験してなくても怖さを感じるものはある。
高いところとか怖かったりするし、
動物を怖がる子供とか虫に近寄れない女の子とかいる。
そうやって危険や気持ち悪さを感じるような記憶が遺伝して
あらかじめ危険を回避して種を存続させてきたのだろう。
なんにしても、釣りあげられてしまった魚は
また戻って仲間たちに自分の恐怖体験を伝えることはできないから、
(しゃべれないし。)となりを泳いでた仲間の魚が急に水面の上に
いなくなるのを見て「うわ、怖ぇ…」って思った、
っていうことなんだろう。
けっこうえらいな。